海外訪問記 〜アジアアロワナを求めて〜

Eng Pang氏(PT. KAWAN SEJATI) 編

2014年11月19日、インドネシアのスカルノ ハッタ国際空港に降り立った。雨季ということもあり空は若干曇り、湿った空気が私たちを迎えてくれた。目指すエンパン氏のファームは空港から南へ下ること約60kmほどの距離。道なりに行っても普通なら1時間もあれば着く距離だ。

 

だが、そこはインドネシア、どこへ行っても大渋滞。さらに途中から大雨に変わり、結局2時間半もかかってようやくエンパン氏のファームに到着した。

 

特徴的な髪型に大柄な身体。大きな手を広げ、エンパン氏本人が私たちを迎えてくれた。その横には、さらに大柄な息子のマイケル氏も。

 

出発した時刻が遅かったこともありファームに到着した頃には辺りはすでに真っ暗。生憎の雷雨と暗闇でファームを見ることは残念ながら断念。

 

隣にあるオフィスにて息子のマイケル氏も交えてお話をさせていただくことに。

 

Episode.1

エンパン氏の作出する『エンパンレッド』の歴史は、今をさかのぼること36年前、1978年にレッドアロワナの繁殖を志し、12尾の親魚を購入したことから始まった。

 

しかも、レッドアロワナの繁殖を始める前には、今となってはポピュラーなネオンテトラ、エンゼルにはじまり、ディスカスまで繁殖を手がけていたというから驚きである。

 

余談ではあるが、エンパン氏曰く、ブラックゴーストの繁殖に世界で初めて成功したのはエンパン氏ご本人とのことである。

 

氏の手がけた数々の繁殖に関する貴重な話を伺うことができた。また、エンパン氏本人の口から出た一言が特に印象的であった。

『自分は器用ではないため、一つのことしかできないんだ。』

その言葉の裏には、やるからにはとことん追求したいという熱い気持ちが隠れていたように感じた。

Episode.2

現在、エンパン氏のファームは2つあり、池の数はおよそ40ほどあるという。

 

では何故、レッドアロワナの故郷であるカリマンタン島から遠く離れたこの地を選び、ここまで大きなファームに成長することができたのであろうか。もちろん、エンパン氏の繁殖にかける絶え間ない努力は言うまでもない。

 

エンパン氏は1番の理由に水を挙げた。エンパン氏のファーム付近にはこれと言って大きな川も無く、ファームを訪れる人は皆、どこから水を引いているのか不思議に思うという。

 

その答えは足元にあった。エンパン氏のファーム近くの高台には、過去に噴火によって埋もれてしまった川があり、なんとその川は現在も脈々と地下を流れているのだという。

 

そのためエンパン氏のファームでは、わずか3mの地下から水を引くことができ、池全体に水を供給しているのだという。そして、この地下水こそが、アロワナを育んでいるのだとエンパン氏は語った。

Episode.3

Eng Pnag Red(エンパンレッド)というブランドを築き上げたエンパン氏。そこには、並々ならぬエンパン氏の熱い思いが詰まっている。特に強いこだわりは、レッドアロワナの繁殖を始めてから一切他の血を交えていないこと。

 

とにかく原種にこだわり、最初の12尾の血を守り続けたエンパンレッドは、今まで、総計約6,000尾が世に出ているという。36年間で6,000尾というのは、他のブリーダーに比べると極めて少ない数と言えるだろう。ここには、無理に仔をとることはせず、いかに自然に近い環境で、そしていかに自然の中で成長させるかにこだわったエンパン氏の信念を感じることができる。

 

だからこそ、どの個体も選び抜かれた原種の血を脈々と受け継いでおり、より大きく、体高が高く、そして力強い顔つきになるのだという。これがエンパンレッドの最も大きな特徴であると言えるだろう。

 

 

さらに、特徴的なのは、その体色の変化にある。エンパン氏自宅横にあるストックルームにてエンパンレッドを見せていただくことができた。

 

20cmに満たない小さな個体はレッドアロワナの特徴である赤がほとんど出ていない。これが本当に赤くなるのだろうかと思ってしまった。

 

だが、その疑問は成長した個体を見た瞬間に覆されることとなった。

 

30cmほどの個体。照明の効果もあるが、力強い発色をみせる。

 

60cmほどの個体。まるで内部から染み出てくるような深い紅色に目を奪われる。

成長によって現れる発色

 

まず、30cm前後での第1次成長

 

そして60cmを超えたころに起こる第2次成長

 

これが人々を惹きつけてやまないエンパンレッドの真骨頂。

 

夕刻、暗がりでの撮影のため、実際の美しさを伝えきれないのが残念だが、美しいフォルムと強烈な色彩を目の当たりにした瞬間、全てが報われた様に感じた。

 
 

エンパンレッドには、ファームのスタンプとエンパン氏の直筆のサインが入れられた証明書が付けられる。

短い時間だったが、何事にも熱く、そして力強く語るエンパン氏。私たちの熱い気持ちも伝わり、今回エンパンレッドを分けていただくこととなった。生憎の天候とは裏腹に、どの空よりも明るく晴れ渡った気持ちの中、私たちは日本への帰路へつくことができた。

今回の訪問で仕入れた個体の一部のご紹介

 

遅い時間の訪問にも関わらず、あたたかく迎えてくださったエンパン氏に感謝するとともに、日本のアロワナファンのもとへエンパン氏のアロワナと、エンパン氏の想いを届けるべく、現在、さらなる信頼関係の構築と入荷の準備を進めている。

 

今後の仕入れに是非ご期待いただきたい。

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