タコクラゲは口腕からつながる付属器が8本ある、その見た目の様子から名づけられたクラゲで、関東以南の沿岸部では、春〜夏の水温が高い時期に見ることができます。
姿が丸みを帯びてかわいらしく、刺胞毒も、たいていの人は痛みを感じない程度なので、最近では、ペットしても人気が出てきました。
褐色の個体は、褐虫藻が共生しているので、光合成でエネルギーを得ることができますが、遊泳力があり、エネルギーの消費が激しいので、飼育する場合は給餌が必要です。
タコクラゲを飼育する
タコクラゲも光合成はおこないますが、サカサクラゲのように水槽壁面に張り付いて光を得ることはできないので、弱めの水流をつけた水槽での飼育します。ほぼ常に自力で遊泳しているため、運動量も多く、まめな給餌が必要ですが、水槽内に直接ブラインシュリンプを投入する場合は、その分、水換えも必要になってきます。水質悪化を防ぐためには、クラゲだけを飼育水ごとほかの容器へ一度移してから、そこでブラインシュリンプを与える方法もおすすめです。
また、照明はなるべく強力なものを選ぶようにします。このような条件だと、藻類が発生することがあるので、日常的な観察と定期的な水換えは必要です。
用意するもの
●海水
人工海水の素などを使用して、海水をつくります。
●エアポンプ
繁殖させたポリプがストロビレーションして、エフィラから育てる場合、小さな容器や水槽と、エアホースの先にストローのような細い筒を付けたものを用意し、その先からポコポコと出る空気の泡によってつくられる、弱めの水流を利用して育てます。傘ができてくる稚クラゲ以降は、遊泳力が出てきますので、エアの量を調整して水流は弱め、細かい気泡が傘内に入らないように大き目の空気の泡で水流をつくるよう工夫します。
●水槽・ろ過用のフィルターなど
大きくなったクラゲは、傘に入った空気が抜けにくくなるので、水流のある水槽を用意して飼育します。その際、給水口や排水口にクラゲが吸い込まれないような工夫が必要です。
●ヒーター・照明など
ヒーターを使用する場合、25℃くらいが適温です。水槽内にヒーターを入れる場合は、ヒーターが直接クラゲに触れないよう、ヒーターにカバーをしてください。照明は比較的強いものが良いですが、水温の上昇にも注意してください。また、コケが発生しやすくなるので注意が必要です。
●エサ
餌はブラインシュリンプを好みます。冷凍のブラインシュリンプやクラゲ用の人工飼料も販売されています。また、直射日光の当たらない明るい場所で飼育したり、照明を十分に当てることで、体内の褐虫藻によって光合成をおこなうことができます。
タコクラゲが弱る原因
タコクラゲが弱る原因は、水温、水の汚れ、細かい気泡、給餌の少なさが考えられます。
まず、水温は25℃くらいが適温です。寒さと異常な暑さは苦手なので、注意してください。
水の汚れはクラゲの粘膜を過剰に分泌させるため、弱る原因です。水槽のお掃除は小まめにし、飼育している水量にもよりますが、1週間に1度は換水することをおすすめします。
細かい気泡も、クラゲの大敵です。胃や傘の中に入ると、気泡が抜けず、穴が開いたり、弱ってしまうので絶対に避けてください。
給餌量は少ないとクラゲが小さくなることがあります。クラゲの成長具合や水槽サイズ、水量に合わせて給餌量を調節してください。
タコクラゲのポリプを飼育する
タコクラゲのポリプ(給餌前)
ポリプは、タコクラゲが好む水温(25℃くらい)であれば、簡単に飼育することができます。
タコクラゲのポリプはプラヌラのようなものを生み出すこともできます。それが付着・着底するとポリプに変わります。つまり無性生殖でどんどん増えていくことができます。
ただし、ほかの種類のクラゲのポリプと飼育する場合、繁殖力が強いポリプに負けてしまう場合があるので注意が必要です。環境や種類にもよりますが、経験から言うと、サカサクラゲのポリプは、タコクラゲのポリプよりも繁殖力が強く、また見た目も似ていて区別がつかなくなるので分けて飼育する方が良いと思います。
タコクラゲのプラヌラを得たい場合は、ミズクラゲ同様、メス親の体に付いていることがあるので、採集したものや購入したものをチェックしてみると良いでしょう。
用意するもの
●海水
人工海水の素などを使用して、海水をつくります。
●水槽・スポンジフィルター
水槽にスポンジフィルターを設置する方法がおすすめです。スポンジフィルターがつくり出す水流によって、スポンジ周りにプラヌラ幼生が集められ付着しやすくなります。スポンジフィルターのエア排出量は少なく、水流を弱くしてください。
●エサ
餌はブラインシュリンプを好みます。白色のポリプがブラインシュリンプを取り込むとオレンジ色に色付きます。
ストロビレーション(ポリプからエフィラ、そしてクラゲへ)
ポリプがエフィラを発生させる現象をストロビレーションといいます。
ストロビレーションを起こす条件は、水温を飼育水温から3〜5℃上げることが一般的に言われていますが、これで必ずストロビレーションが起こるわけではありません。ポリプの大きさや光量など他の条件が必要なのかもしれません。どの種類のポリプにも言えることだと思いますが、給餌をしっかり、1日に2回程度おこなうと、ポリプの繁殖力も強くなっていきますし、ポリプ自体の状態も太く丈夫なものになり、その後、条件を整えたときに起きるストロビレーションの確率も高くなるように感じます。
ポリプから離れたエフィラは光を求めて、明るい場所で泳いでいます。タコクラゲの場合も、エフィラの期間は短く、数日すると、傘が膨らんできて稚クラゲになります。
タコクラゲのポリプは、ストロビレーションしてエフィラを出した後も、ポリプの根元が残っていれば再生し、元のポリプに戻ることができます。