ミズクラゲは日本の海でよく見ることができるクラゲです。
海で見かけるミズクラゲは、地味なイメージですが、水族館や観賞魚イベントでは、趣向を凝らして展示されており、透明感のある体はカラフルな照明によって幻想的に照らされ、傘の動きもゆっくりなため、日常の喧騒を忘れて見入ってしまう方も多いことでしょう。
飼育も比較的に簡単で、コツをつかみ、水槽を用意すればご自宅でも飼育することができます。
毒はほとんど感じませんが、敏感な方もおられるかもしれませんので、念のため、直接触れるのは避けてください。クラゲのサイズにもよりますが、レンゲスプーンや料理に使用するおたまなどを使って移動させましょう。
ミズクラゲを飼育する
水温は、15〜25℃であれば、温度の調整器具は必要ありません。
サカサクラゲやタコクラゲのように光合成はおこないませんので、よりこまめな給餌が必要で、水質の状況にあわせて水換えも必要です。水質悪化を防ぐためには、クラゲだけを飼育水ごとほかの容器へ一度移してから、そこでブラインシュリンプを与える方法もおすすめです。
用意するもの
●海水
人工海水の素などを使用して、海水をつくります。
●エアポンプ
繁殖させたポリプがストロビレーションして、エフィラから育てる場合、エフィラは数ミリ程度の大きさのため、ろ過装置があると吸い込まれます。しかし、水流は必要ですので、最初のうちは小さな容器や水槽と、エアホースの先にストローのような細い筒を付けたものを用意し、ポコポコと出す空気の泡の量を、エフィラが回転する程度に調整して育てます。
エフィラは数日するとメテフィラを経てだんだんと稚クラゲになります。稚クラゲになると遊泳力が出てきますので、エアの量を調整し、水流を弱めてください。傘ができてくると、細かい気泡が傘に入る危険が高くなるため、気泡は出ないように注意が必要です。500円玉硬貨くらいの大きさまでは、この方法で飼育できます。
●水槽・ろ過用のフィルターなど
大きくなってくると、傘に入った空気が抜けにくくなるので、クラゲ飼育用の容器に移動することをおすすめします。通常の水槽でも、仕切り板を付けて、ろ過用のフィルターの給水口などに吸い込まれないように工夫すれば、クラゲを飼育することができます。
●エサ
エサはブラインシュリンプを好みます。冷凍のブラインシュリンプやクラゲ用の人工飼料も販売されています。数時間程度で食べ切れる量を与えてください。水槽内で直接エサを与える場合は、飼育水が汚れてきますので、飼育水の透明度が悪くなれば水換えが必要です。
ミズクラゲが弱る原因
すぼんでいたり、正常な楕円にならずシワができている、
弱った状態のミズクラゲ
ミズクラゲが弱る原因は、水温、水の汚れ、細かい気泡、給餌の少なさが考えられます。
まず、水温は15℃〜25℃までが適温です。暑さは苦手なので、注意してください。
水の汚れはクラゲの粘膜を過剰に分泌させるため、弱る原因です。水槽のお掃除は小まめにし、飼育している水量にもよりますが、1〜2週間に1度を目安に換水することをおすすめします。ミズクラゲが水槽の底でじっとしてしまうと、目に見えない微生物によってクラゲがさらに弱ってしまうので、そうならないように水流をつくる必要があります。
細かい気泡も、クラゲの大敵です。胃や傘の中に入ると、気泡が抜けず、穴が開いたり、弱ってしまうので絶対に避けてください。
給餌量が少ないと、クラゲが小さくなることがあります。クラゲの成長具合や水槽サイズ、水量に合わせて給餌量を調節してください。
ミズクラゲのポリプを飼育する
ミズクラゲのポリプ(給餌後)
ミズクラゲはポリプの飼育から始めると、クラゲの生態がよく分かります。
ミズクラゲでは、メス親クラゲの卵がオス親クラゲの精子と受精してできる受精卵からプラヌラというかたちになったものが、岩や水槽内に付着・着底し、変態してポリプになります。ポリプは、出芽という無性生殖でどんどん増えていくことができます。
またミズクラゲの場合は、プラヌラからポリプというかたちを経ずに直接エフィラに変態する場合もあるそうです。
ミズクラゲのプラヌラは、メス親の体に付いていることがあるので、フィールドで採集したものなどから得られることができます。
ミズクラゲは高温に弱いクラゲなので、ポリプも25℃以下くらいで飼育するようにします。
用意するもの
●海水
人工海水の素などを使用して、海水をつくります。
●水槽・スポンジフィルター
水槽にスポンジフィルターを設置する方法がおすすめです。スポンジフィルターのエアー排出量は少なく、水流を弱くしてください。ほかにもガラス片やプラスチック片などポリプが一度付着したものを入れておけば、そこからポリプが増えていきます。
●エサ
餌はブラインシュリンプを好みます。白っぽいポリプがブラインシュリンプを取り込むとオレンジ色に色付きます。
ストロビレーション(ポリプからエフィラ、そしてクラゲへ)
ストロビレーションを起こしたミズクラゲのポリプ
ポリプがエフィラを発生させる現象をストロビレーションといいます。
ミズクラゲのポリプは、ストロビレーションを起こす条件が以下のようにはっきりしているので、変態していく様子を観察できる確率が高いのが特徴です。
ミズクラゲのストロビレーションの条件
1.水温
2.飢え
3.密度
水温は、飼育水温より10℃近く下げて約15℃程度で維持すると、2〜6週間後にストロビレーションを起こします。ポリプの体色が乳白色から赤色に変わります。その後、ポリプにくびれができて、エフィラと呼ばれる円盤状の形になって1枚ずつ巣立っていきます。
ストロビレーション後、ポリプから離れたミズクラゲのエフィラ
ストロビレーションを仕掛けたらエサを与える必要はありません。
仕掛けるポリプの数は、ある程度密集している方が順調にストロビレーションを起こしやすくなります。ストロビレーションを仕掛ける容器は、シャーレやプラスチックのカップ型容器などで十分で、エアレーションも必要ありません。
ミズクラゲのポリプがクラゲの成体に成長するまでの様子を動画でご覧いただけます。
エフィラが拍動する様子や、給餌後の親クラゲの様子もあります。
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