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繁殖に挑戦

今回、こちらでは主にカリビアンシーホースの繁殖についてご紹介します。

オスが妊娠!? 〜 タツノオトシゴの興味深い繁殖 〜

タツノオトシゴを含むヨウジウオ科の魚は、メスがオスに卵を産みつける特異的な性質をもっています。オスが精液を卵にかけるのではなく、逆にメスがオスに卵を産みつけ受精させるのです。

 

タツノオトシゴに関しては、オスの育児嚢(いくじのう)と呼ばれる腹部の小袋に産みつけられます。育児嚢に産みつけられた卵は、その中で受精し、妊娠します。オスは、種類によっても多少異なりますが、カリビアンシーホースの場合、おおよそ2週間ほどの妊娠期間を経て、稚魚を出産します。

 

オス・メスの判別

オスとメスの判別は比較的容易にできます。オスには、腹部に上記で述べた育児嚢があります。タツノオトシゴの表面は全体的にゴツゴツとした感じがありますが育児嚢の表面は滑らかになっています。逆にメスの腹部には、育児嚢はないため、ゴツゴツとしてくびれた様になっています。

 

このように外見からすぐに判断できるので、ペットショップでもすぐにオスとメスを見つけられると思います。ただし、まだ、小さい個体は、全てメスの特徴を持っているため、しばらく飼い込まなければオス・メスの判断ができないのでご注意ください。 

 

ペットショップによっては、ペアでの販売をおこなっているところも多いので、それらを購入すれば間違いないでしょう。

 

 

   
オスの育児嚢。表面が滑らかなのが特徴です。 メスの腹部には育児嚢はありません。

 

1ペアなら小型水槽でも繁殖に挑戦できる!!

大型種を除き、1ペアであれば水量50Lほどの水槽からでも繁殖を狙えます。

『タツノオトシゴの飼育』で述べた環境を用意し、そこへオスとメスを入れます。

 

産まれた稚魚が吸い込まれてしまわないように、フィルターなどの吸水口にはスポンジを付けておきます。

 

成熟したオス・メスであれば、比較的早く求愛行動が観察できるでしょう。求愛行動は、オスがメスを追尾し、育児嚢を大きく膨らませてアピールします。まるで『僕のお腹に早く卵をちょ〜だい』と言っているかのようです。メスの準備ができていれば、卵の受け渡しがおこなわれますが、その姿はとても情熱的です。

 

お互いにお腹とお腹を付き合わせて、見方によっては、重なり合った2尾がハート型にも見えます。じっくり観察しておかなければ、なかなかこの瞬間を目撃することはできませんが、幸運にも観察できたときはとても幸せな気分になることができるでしょう。

 

稚魚の育成

出産と稚魚の回収
 出産間近のオスの育児嚢。パンパンに膨れてきます。

交尾が終わり、約2週間の妊娠期間を経ると育児嚢は稚魚でパンパンに膨らんできます。いよいよ稚魚の出産の時です。出産は早朝におこなわれることが多く、育児嚢を伸縮させて開口部より勢い良く放出されます。稚魚の数は、メスやオスの産卵経験数にもよりますが、1回でおよそ100〜500尾ほどです。大きな個体になると1回で1,000尾も出産することもあります。

 

産まれてすぐの稚魚は、水面へ浮遊してきます。浮いて集まってきた稚魚をプラケースなどを使いそっと回収しましょう。経験上、親魚は稚魚を捕食することはありませんので、焦らず慎重に稚魚の回収をおこなってください。

 

回収した稚魚は、稚魚育成水槽へ移します。育成水槽は水量が100Lほどあるのが理想です。稚魚は結構、大食漢で代謝も早いため水量が多いことに越したことはありません。

 

産まれてしばらくの間は浮遊生活を送るため、水槽には緩やかな水流を作ってあげ、水がゆっくりと回転するようにしましょう。

 

稚魚の育成

産まれた稚魚は最初から成魚と同じ容姿をしており、食性も成魚と同様で小型の甲殻類などを捕食します。そのため、稚魚飼育にはこれらの初期餌料の供給が不可欠となります。

 

産まれるとすぐにエサを食べることができますので、育成水槽には、初期餌料としてワムシを給餌します。その後成長に合わせてブラインシュリンプに切り替えていきましょう。ただし、ワムシやブラインシュリンプのみの給餌では栄養価が低いため、生存率が悪くなる傾向がありますので、栄養強化して与えるのがポイントです。

 

生物餌料の管理方法や給餌方法などは『家庭でできる稚魚のエサ』を参考にしてください。

 

ワムシを与える量は、飼育水に 10個体/ml の濃度になるようにし、最初の給餌以降は、この 10個体/ml をキープできるように減った分だけを追加していきます。また、ワムシが水槽内で死なないように、ナンノクロロプシスという植物プランクトンを水槽が若干緑色になるくらい入れておく必要があります。

 

   
産まれてすぐの稚魚は水面へ浮いてきます。慎重に回収しましょう。

 

 

日齢:0日

稚魚育成水槽に収容された稚魚たち。体長6-7mmと小さいですが、すでにタツノオトシゴの容姿をしています。

 

その日からワムシを食べるようになりますので、ワムシがなくならないように注意してください。

 

 

日齢:5日

初期の頃の成長は早く、日齢5日で体長12-14mmまで成長します。

 

ワムシの摂餌量も増加するので、ワムシの数には注意してください。

 

 

日齢:14日

 

足場の一例

 

2週間も経つと体色もはっきりしてきます。体長は16-18mmくらいまで成長しています。

 

この頃には口もだいぶ大きくなってきますので、ブラインシュリンプを少量ずつ与え、切り替えていく準備をします。ブラインシュリンプを摂取した個体のお腹はオレンジ色が透けて見えます。

 

まだ、水流に乗って浮遊している個体が多いですが、この頃から大きな個体から着底し始めるので、足場となるものを入れましょう。

 

足場には、海藻などもいいですが、枯れて腐敗の原因となることがあるのでプラスチック製のネットや毛糸で自作したものを利用するといいでしょう。

 

 

日齢:20日

ほぼ全ての個体が着底します。体長は22-25mmまで成長しています。

 

尾を足場に絡ませてタツノオトシゴ独特のポーズをとるようになります。

 

この頃にはブラインシュリンプへの切り替えが終わっているはずなので、2時間ごとに給餌をおこないます。消灯後は与える必要はないので、消灯までに食べきれる量を与えましょう。ナンノクロロプシスの添加は、ワムシを与えなくなった時点で、おこなわなくても大丈夫です。

 

 

日齢:40日

体長30-35mmにまで成長してきました。だいぶ大きくなってきたので、ブラインシュリンプではエサとして小さくなってきました。

 

そこで、この頃から、冷凍ホワイトシュリンプへの給餌に切り替えていきます。これまでの生物餌料とは違い冷凍飼料は自ら動かないため根気強く慣らしていく必要があります。

 

まずは、冷凍ホワイトシュリンプを細かく切り、食べきれるサイズにして与えてみましょう。何度か繰り返し与えると、水流に乗って流れるホワイトシュリンプをじっくり見ながらパクッと食べる個体が出てきます。ホワイトシュリンプを食べる個体が何匹か出てくると他の個体もつられて食べるようになります。そうしたら、冷凍飼料への餌付けへのゴール間近です。

 

稚魚の成長に合わせてサイズを徐々に大きくしていき、最終的に通常のサイズのホワイトシュリンプも食べるようになります。切り替え当初は、冷凍ホワイトシュリンプを食べない個体もいるため、ブラインシュリンプも並行して与えてください。もし可能であれば、切り替え当初に活きイサザアミを与えることで、冷凍ホワイトシュリンプへの興味が増し、餌付けが早くなります。

 

 

日齢:90日

体長50-60mmくらいまで成長しています。すっかり冷凍ホワイトシュリンプに餌付いた幼魚たちは、飼い主が近づくとエサをねだりに寄ってくるようになります。

 

ここまでくれば、親魚と同様の飼育に切り替えても問題ありません。

 

目指せ永年飼育 〜 孫・ひ孫そのまた孫たち 〜

成熟

産まれた稚魚たちを順調に飼育していくと、日齢150日を過ぎたあたりから、オス・メスの差が出てきます。オスになる個体は、まず腹部の下に黒い帯状の柄が入ります。次第に帯の部分が膨らみ始め滑らかになり育児嚢が形成されます。

 

産まれて半年ほどで性成熟し、また新たな命を育んでいきます。F1、F2と何世代にも渡って飼育繁殖を続けることも可能です。

 

   
オス化する個体の腹部。黒い帯状の柄が出てきます。 メスになる個体には帯が現れません。

 

オス化してきた個体の腹部。表面が滑らかになってきているのが分かります。

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