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第36回日本観賞魚フェア レポート

※一部画像はクリックすると別窓で拡大表示できます。

桜と共に春の訪れを知らせる日本観賞魚フェアが、今年もタワーホール船堀にて4月14・15日に開催されました。 長きにわたり江戸川という地で歴史を重ね、今年で36回を迎える観賞魚フェア。 来場されてまず驚かれた方も少なくないことでしょう。何故なら、会場全面に広がる琺瑯(ホーロー)その数400弱。従来の水槽展示から一変、上見で金魚を愉しむスタイルに。

 

 

 

 

 

 

この日、春の嵐に見舞われた都内各地。ですが予報よりも一足早く晴れ間がのぞき、待ち望みにしていた方々の思いが天気までをも変えたかのように思えました。 例年のごとく活気と賑わいにあふれ、興奮した様子で琺瑯(ホーロー)を覗き込んだり小さな手でカメラをしっかり握り写真を撮ったり、愛好家の方々は金魚について熱く語り合い、老若男女を問わず多種多様に愉しんでいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年の観賞魚フェアは今まで展示されていたディスカス、グッピー、ベタ、水槽レイアウト等は展示せず、金魚とメダカのみ。 「少し殺風景ね」という声もありましたが会場全体が見渡せて、金魚を愛でる表情が沢山伺えました。

 

メダカの品評会

金魚の品評会で盛り上がりを見せるすぐそばで、メダカの品評会も金魚に負けず劣らず、見る人の心に印象づけていました。 近年メダカの品種改良がより一層進み、次から次へと真新しい品種が生まれては世間を賑わせていて、「MDS」、「CBキング」、「BBキング」など、ネーミングにも作出者のこだわりが伺えます。

この日会場に訪れていた、今回のメダカ品評会で特別賞を受賞したヒレ長ロングフィン幹之を作出した、行田淡水魚の小暮氏は1年間で新しい品種は出来て2〜3種だといい、あくまで趣味の世界、普段は通常のメダカをつくることに精力を傾けているとのことです。「次はあれとあれを掛け合わせてもっと色を良くしたい」生き生きした表情でおっしゃっていました。

たった数センチでしかないその体に作出者の思いが重なり、色となり煌きを放つ。 芸術の極みともいえるメダカの人気は、この先ますます沸騰すること間違いないでしょう。

 

以下に特別賞をご紹介します。

日本観賞魚振興事業協同組合理事長賞  ヒレ長ロングフィン幹之 小暮 武氏 

 

東京組合長賞 三色ラメ幹之 山崎 圭吾氏 

 

月間アクアライフ賞 三色錦 高澤 正義氏 

 



以下に出品魚の一部をご紹介します。

黒幹之

スミレ

 

シャンシャン

黒ラメ幹之体外光

 

かがやき紬​

新三毛猫

 

あけぼの

幹之MDSダルマ

 

金魚部門受賞者 インタビュー

ここからは今大会、農林水産大臣賞及び水産庁長官賞を収められた出品者の方々にお話を頂戴しましたので、ご紹介させて頂きます。

 

 

農林水産大臣賞 親魚 和金 (株)日本金魚卸売市場

 

まず始めに、見事総合優勝に輝いた親魚、和金を出品された(株)日本金魚卸売市場(潟}ルウ) 古津 正也氏。総合優勝を受賞された感想をお聞きしたところ、「選んで頂けた事に感謝したい。色艶、大きさ、共に申し分無く自信はあった。」そう話すのも納得のいく程、ずっしりとした体型に鮮やかな更紗柄。上見、横見どちらからでも見応えがあり、貫禄たっぷりです。

古津氏は金魚の道に進み約20年。実は、10年前にも総合優勝を収められています。 高校卒業後の当初は熱帯魚に興味があり、そちらの道に進むことも考えていたそうですが、株式会社マルウさんに就職し今に至るとのこと。そこで金魚の美しさに魅了され、その美しさを追求することにすぐに夢中になったといいます。「この業界に入ったからには1番でいたい。」と話す古津氏。常日頃から1番になるという目標を掲げ、休日も金魚の状態を見に来ることが日課になるくらい、まるで金魚が自分の子供であるかのように大切に育てておられるそうです。

最後に少し恥ずかしがりながらもこんな事をおっしゃってくれました。「朗報を受けた際、涙を抑えられなかった。前回総合優勝を果した際は勢いでしかなかったが、長い歳月をかけて積み上げてきたものが結果につながった。10年越しの総合優勝というのは、様々な感情が入り乱れ嬉しさが込み上げた。こんな感情を持ったのは初めてだった。」そう語る目は薄っすらと潤んでいるように見えました。そして古津氏は早くも次を見据え、また1番になれるようしっかり準備をし頑張るのみだとおっしゃっていました。

(株)日本金魚卸売市場(潟}ルウ) 古津 正也氏

 


 

 

 

水産庁長官賞 二歳魚 琉金 川澄 太一氏

 

品評会の入賞者に名を連ねる常連でもある川澄氏。第35回日本観賞魚フェア、二歳魚の部でも水産庁長官賞を収められており2年連続の受賞となります。その他、今回の親魚、蝶尾の部でも優勝を受賞されました。

 

今回出品した琉金は、品評会に向けて大きく成長させるために2月頃から多めに餌を与えていたところ、転覆気味になってしまったそうです。そこで、餌の量を通常の1/3に減らして飼育を続け、状態を回復させることに成功しましたが、今度は体色が色褪せてしまったそうです。そこからさらに知見を活かし、品評会1週間前からアオコの発生した池に環境を移し、色揚げをおこないこの日に臨んだといいます。度重なる逆境を乗り越えての受賞は、まさに“禍を転じて福と為す”といったところでしょうか。

 

始めて品評会に出品したのは2005年〜2006年頃。今では入賞の常連である川澄氏も当初は入賞できず頭を悩ませたようです。そこで周りの出品魚と見比べると、自分の金魚が痩せていることに気づかされました。どうしたら入賞できるのか。ふと思い出したのは、当時寮の隣の部屋に住んでいた友人の金魚の飼いかた。その友人は金魚の水槽の水が緑色になるほど餌をあげていて、稚魚も当歳魚も随分サイズが大きかったそうです。 その飼いかたを取り入れてから入賞するようになったとのこと。 学生時代、隣の部屋に住む友人から得たヒントが、入賞の常連になるまでの道のりの近道になったのかもしれません。

 

普段、川澄氏は高校で理科の教諭をされており、現在は高校1年生の担任を受け持っているとのこと。つい先日新入生との顔合わせの際、生徒がただ机に座るだけでは面白くないからと、シャーレに金魚の産まれたての稚魚を入れ、顕微鏡で一緒に観察する時間を設けたそうです。教育の中にも金魚を取り入れる川澄氏のスタイル。なかなか斬新なファーストコンタクトに思われますが、自分が面白いと思った事は生徒にも常に伝えていきたいという思いで実施されたとのことです。 教え子の中から品評会で入賞する子が出てくるのも、そう遠くはないでしょう。

 

また川澄氏は、今後、自分で卵を採取し育てた金魚を品評会に出して入賞したいと意気込んでおられましたので、次回の品評会でどんな金魚を出品されるのか今から楽しみに感じました。

 

東京海洋大学ご出身の川澄氏は、元東京海洋大学学長の岡本先生の教え子でもあります。

 

現学校法人トキワ松学園 理事長・学長 岡本 信明氏

 

 

「岡本先生」というと金魚の業界では知らない人がいないほど、金魚を愛し金魚に愛されたお方と言っても過言ではないくらい、とにかく金魚が大好き。この日も嬉しそうに満面の笑みで金魚についてお話して頂きました。岡本先生は金魚のイベントには必ずといっていいほど足を運ばれていて、ご自身でも沢山の金魚を飼育されています。 中でも岡本先生の提唱する「どんぶり金魚」という、金魚をより身近なペットとして接する考えと飼育方法は一躍脚光を浴び“どんぶり金魚の楽しみ方”という書籍も出版されています。

 

そんな岡本先生から見た今回の品評会は、総合優勝の和金をご覧になり、「全盛時代。非常に綺麗でキワがしっかりしている。」と感心されていました。その他の出品魚に関してもじっくりご覧になりながら、それぞれの素晴らしさを評されていました。 加えて、もっともっとパステルカラーの金魚が出てきて欲しいという岡本先生のお気持ちも伺いました。桜錦、もみじ琉金、モザイク透明鱗など一時期ブームになりつつあったものの、優しくて淡いパステルカラーの金魚は大きくなると、どうしてもキワがぼやけてしまい、伝統的美しさを持つ品種には適わない「優しさだけでは勝てない」と今回の入賞魚を称えつつも、少し残念そうではありました。

 

また、金魚は、美しさを自慢し楽しむ「観賞魚」としての金魚と、犬や猫のように家族として触れ合い、お世話をしてあげる「ペット」としての金魚という、大きく2つの接し方があると分析されており、これからはペットとしての金魚“人の方を向いた金魚”がもっと増えて欲しいとおっしゃっていました。

 

今回お話を頂き、僭越ながら、岡本先生の目に映る「金魚」とは「水槽の中を泳いでいる」というよりも、人のすぐそばで自由気ままに泳ぎ、癒しと喜びを与えてくれる金魚のイメージが伝わってきました。





取材するにあたり、ご協力頂きました方々、丁寧にご対応くださいましたこと重ねて御礼申し上げます。






海外からの出品者

日本の金魚品評会では、海外の方の出品というのは、あまり見かけないのですが、今回、 インドネシアで金魚生産をおこなうLIMAS GOLDFISH FARMが東京海洋大学学長賞を受賞しました。

 

日本の品評会に始めて出品し特別賞を受賞した感想として、LIMAS GOLDFISH FARM のDANI氏は、「賞を頂きとても幸せでハッピー。来年以降は、もっと色々な品種で上位の賞を狙っていきたい」とおっしゃっていました。

 

LIMAS GOLDFISH FARMはインドネシアの国内の品評会だけでなく、シンガポールで開催されている品評会でも優秀な成績を収められていて、そのハイグレードな金魚は世界中から高い注目を集めています。 そうしたトップクラスに君臨するLIMAS GOLDFISH FARMが日本の品評会に参加し、いきなり入賞したニュースは、日本のみならず海外の金魚業界をもざわつかせることでしょう。

 

弊社、神畑養魚はLIMAS GOLDFISH FARMと連携を深めておりますので、準備が整い次第、同社の生産する金魚を皆様に紹介したいと思います。

 

LIMAS GOLDFISH FARM DANI氏

 

東京海洋大学長賞 親魚 水泡眼 LIMAS GOLDFISH FARM

 

神畑養魚出品魚 受賞

最後に、手前味噌ではありますが、弊社のブリーディング部門から出品した金魚が受賞致しましたので掲載させていただきます。

 

今回、出品した金魚はカミハタブリード金魚、いわゆる薩摩産金魚の中でも特に生産に力を入れているピンポンパールとだるま琉金です。カミハタブリーディング部門にて本格的な金魚生産が始まってから5年、栄誉ある賞を頂くまでに至りました。今回の受賞は、これまで取り組んできたことが報われたことへの感謝と同時に、今後の金魚生産への励みとなります。

 

出品した個体の特徴としまして、だるま琉金は体型はさることながら、調和の取れた体色をしたトリカラーだるま琉金。これぞトリカラーという個体です。緋・墨・銀鱗・透明鱗のバランスを考え、中でも緋と墨の濃さが勝っているものを出品魚としました。

 

またピンポンではあまり見かけない更紗柄。珍珠鱗であるため、体色における際がぼんやりとすることが多い中、はっきりとしています。緋の濃さもポイントの一つ。各ヒレに緋がのっていることも、この金魚の美しさを際立たせていると思います。

 

弊社から薩摩産金魚としてお届けしている多くのピンポンパール、トリカラーだるま琉金にもしっかりと受賞魚の血が受け継がれています。

親魚 琉金型改良種 だるま琉金

 

 

親魚 珍珠鱗 ピンポンパール

 

 

 
 

以下に出品魚の一部を紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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