出雲なんきん 石飛氏 2014年 B

選別

さて、次に石飛さんの選別について順を追って述べていく。最初の一次選別で尾と奇形の選別をおこなう。フナ尾やスボ尾、その他に奇形をよけるがその割合は5-6割にものぼる。また、尾の開き具合の目安は120°。180°くらい尾が開いていると成長した時に尾が外側に反り返ってしまうため、開きすぎている個体はハネる。選別で残す個体の尾の開き具合は、使っている系統の尾が強いという特徴を勘案して決めている。つまり、尾が弱い個体を親に使った場合と尾が強い個体を親に使った場合では、選別の時の基準が異なるというわけである。

 

一次選別後に90cm×120cmのたたき池に300匹収容し、水深を12cmくらいにして飼育する。このときの深さが深すぎると水圧がかかってしまい尾が開かない。水深については魚の大きさ、尾の張り具合に応じて7cmにしたりするというから、このあたりのコツは経験によるところが大きい。

 

孵化30-50日後、全長2-3cmぐらいになった時に二次選別として四つ尾の選別を行い三つ尾とさくら尾はよける。選別をくぐりぬけたものを先ほどと同じサイズの池に100匹収容する。このときも水深は12cmくらいにする。ここまでの尾の出来具合に大いに関係していることが孵化までにかかる日数で、長すぎてもダメだし、短すぎてもダメだという。さらにその2−3週間後に背の選別を行い、1池に50匹収容、水深は15cmくらいになる。

調色

さて、出雲なんきんの体色が調色によるものであることは(すべての個体がそうではないが)多くの金魚愛好家に知られていることであるが、ここでは石飛さんの調色の技術についてごくかんたんに紹介する。

 

調色する時期は今年は早くなり7月10日ごろにおこなったが、例年は7月20日ごろにおこなう。調色は黒仔のときにおこなうが、そのタイミングは鱗がパラパラとうすいオレンジ色になった時であり、100%オレンジ色になってしまうと遅すぎる。尾から色変わりが始まって頭に変化が出て薄いオレンジ色になる頃に、鱗もオレンジ色になってくる。このタイミングを狙う。

 

また、水温が28℃ぐらいになってから処理をおこなった方が、赤が飛びやすく、上手に赤色を飛ばせる。調色には梅酢を使う。筆に梅酢つけて体や顔に塗るが、梅酢が塗られた部分が白色になる。筆でなぞった部分が白くなるイメージを持って、自分の理想とする模様をもつ金魚にするのだ。

 

 

自家培養している仁丹藻

調色後にはメチレンブルーを投薬し、治療を行う。きちんと治療をおこなうことで鱗が痛まないようになり、きれいな鱗を保てて傷の治りも早いという。その後一週間は薬浴をおこない、その間はエサを与えない。その後、色が抜けて完全に模様がついたら『咲ひかり金魚 艶姿』と石飛さん特注のエサを半々で与える。さらに色揚げのために仁丹藻も与えている。模様が決まってから与えるが、仁丹藻は自家培養していて、コケによる色揚げ効果の代わりになると考えて与えている。

 

 
 

仁丹藻は色揚げのために与えている。

「『咲ひかり金魚 艶姿』の良いところは、赤白のキワがきれいに仕上がるところ。色が揚がったら色揚げのえさを特別に与えることはしない」とのこと。また、今年になって、ビニールハウスのビニールをUVカットのものから、UVカットではないビニールに換えた。すると、コケの感じが変わってきて色も赤が濃くなるようになったという。紫外線とコケ、赤色との関係についても、なにか秘密がありそうだ。

 

 

 

池を泳ぐ当歳魚の群れ

当歳魚用のエサ。キョーリンの『艶姿』と石飛さんの特注エサが半々で混ぜられている。

エサやり

2歳魚や3歳魚にはキョーリン『ひかり胚芽中粒』の沈下性を与えて、4歳からは浮上性のエサを与えている。

 

エサやりは10月までは6,9,12,15時の1日4回。11月から11月末までが7,11,15時で1日3回。それぞれフードタイマーを用いて行っている。フードタイマーには落下防止の工夫も施されていた。12月からはエサを切って冬眠に向かわせる。

 

フードタイマー落下防止の工夫

 

おわりに

石飛さんが記録する飼育ノートは毎年1冊ずつ増えるが、石飛さんの頭の中にある出雲なんきんの作り方は蓄積した経験に基づき毎年最良のものに更新されている。「来年は白で勝負したい。(※白とは白一色の個体のこと。)品評会で白で勝負するためには欠点がない個体でなければ勝負にならない。」と語る石飛さんの言葉は、白でも勝負できる魚を作ることができるという自信の現れでもあると感じた。抜群の美しさを誇る純白のなんきんを見ることができる日はそう遠くないだろう。

 

4歳魚

4歳魚

 

種親として使っている4歳魚

3歳魚

 

3歳魚

当歳魚

 

当歳魚

当歳魚

 

当歳魚

当歳魚

 

当歳魚

当歳魚

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