深見養魚場 2014年 秋 B

青らんちゅうと青秋錦

青らんちゅうも青秋錦も、どちらも深見さんが得意とする品種である。決して流通量は多くないのでいつでも気軽に入手できる品種ではない。それこそ、店頭で見かけたらその場で家に連れて帰るかどうか決断を迫られるような魚である。

 

この2種について作出の経緯を伺った。「元となった種親は、らんちゅうと青文魚。それらから得た3代目(F2)で10〜20匹が残せる魚になって、4代目(F3)以降で100匹程度の歩留まりで残せるようになり、だんだん歩留まりが良くなっていったんだ。」尾の長いものは秋錦・青秋錦の両方にそれぞれ固定し、尾の短い青色の個体は青らんちゅうに固定していったのである。それぞれについて羽衣(青と白の個体)が出現するが、体型がよりらんちゅうに近いものの方が羽衣になりやすい性質をもっているように感じるとのことだ。

 

青秋錦・青らんちゅう・羽衣らんちゅう 親魚

青秋錦・羽衣秋錦 親魚

 

秋錦 親魚

おわりに

 

品種を作出し固定するためには、当然だが何年もかけて継続的に取り組まなければならない。例えば、何か新しく品種を作ろうとして別々の品種の親同士を交配すると、F1はだいたいが表現型が中途半端になる。その中からなんとなく特徴がありそうな個体を集めてF2を採ろうと思うとまずは親に育て上げなければならないが、普通に飼育していると産卵するまでに1年はかかる。その間、健康に育て続けなければならないし、産卵するようにきちんと成熟もさせなければならない。そうしてようやくF2を採ったとしてそれで終わりではなく、F3、F4と繰り返し子を採り続けなければなかなか理想通りの個体はできあがらない。その行程は相当な忍耐力が必要だが、なによりも自分の理想とする金魚を眼前にするという強い意志が必要である、と私は思う。

 

青ランチュウや青秋錦という新しい品種を作出し固定・流通させる背景には、並々ならぬ深見さんの努力があるのだと思う。桜錦を作出・固定して新品種として確立した父の深見光春さんの代から受け継がれている強い情熱を感じるし、作り出す魚を通してそれを感じられるからこそ、深見養魚場が金魚業界でひときわ輝きを放っている所以であると感じた。

 

今の深見さんの魚と将来の深見さんの魚、変化を見届けられることは人生における楽しみの1つであること間違いなしである。私が老人になる頃、もしかしたらとんでもない品種を深見さんは作り上げているかもしれない。

東錦 親魚

パールスケール 親魚

鈴木系東錦 親魚

鈴木系東錦 親魚

六鱗 当歳魚

親魚の育成池

親魚の育成池

親魚の育成池

選別時など土池から魚を取り上げる際に使う竹簾(タケズ)

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