品種をあらわす遺伝形質
グッピーの品種は数多くが知られていますが、それらは様々な遺伝形質の組み合わせから成り立っています。
少し難しい話になりますが、これらの遺伝形質を表現する遺伝情報は「染色体」というところに格納されています。この“「染色体」に存在する遺伝子” が、主に体色やヒレの形だったり、体・尾ビレの色彩と模様などといった遺伝形質を決める情報源となっています。
常染色体と性染色体
染色体には「常染色体」と、性を決定する「性染色体」があります。
「常染色体」には、雄雌に関係なく同じような表現になって現れる遺伝子が含まれています。グッピーの場合、常染色体には、体色を表現する遺伝子、またリボンやスワローなどヒレの形を表現する遺伝子があります。もちろんそのほかにもグッピーを形作るための様々な遺伝子が存在しています。
「性染色体」には性自体の決定のほかに、その性を強調し生殖相手にアピールする表現に作用する遺伝子が多く含まれています。 人間なら体格や肉付き・顔立ち・声などで男女に違いがあるように、グッピーの場合も、目立つ体の色彩や模様、尾ビレの色柄や大きさなどが雌雄で異なる表現となっています。
それぞれの染色体上にある遺伝形質
ここにグッピーの品種のもととなる遺伝形質を一部分、それぞれが存在する染色体と一緒に例としてあげてみました。
●体色(常染色体上にある遺伝子で決定される)
ノーマル
ブルー(ブラオ)
ゴールデン
アルビノ
タイガー
●ヒレの形(常染色体上にある遺伝子で決定される)
ライヤーテールグッピー オス
デルタテール
ファンテール
ライヤーテール(レース)
ライヤーテール(ソード系)
ダブルソード
トップソード
ラウンドテール
ピンテール
スピアテール
リボン
スワロー
メラー
●体の色彩と模様(性染色体上にある遺伝子で決定される)
プラチナ
メタル
コブラ
タキシード
オールドファッション
アクアマリン(ジャパンブルー)
サンタマリア
プラチナアクアマリン
ラズリー
ギャラクシー
国産品種のネーミングについて
さて多くの品種がある国産グッピーですが、その命名方法には古よりの経験をふまえての基準が作られています。上記で2種類の染色体上にあるグッピーの品種のもととなる遺伝形質を紹介しましたが、それらが次のような基準に沿って並べられてグッピーの名前が付けられています。
@体色(常染色体上の遺伝形質)
+
A体の色彩・模様(性染色体、多くはY染色体上の遺伝形質)
+
B尾ビレの色彩・模様・形(性染色体、多くはX染色体上の遺伝形質)
+
Cヒレ(尾ビレではない)の形
※AとBの順序が逆になる場合もあります。
例をあげると、リアルレッドアイアルビノジャパンブルーグラスリボン や ゴールデンレッドテールコブラリボン といった表記です。
続けて書いていくと非常に長くなるのですが、個々の遺伝形質の表現がわかっていれば名前を見ただけでどんなグッピーかが判るという大変便利な方法です。ちなみに数多くの遺伝形質をあわせもったグッピーを、とある遊戯になぞらえて「役満グッピー」と呼ぶこともあり、その難易度の高さが判ります。
これと似たような命名法に、中国金魚があります。体形(和金型=草魚、琉金型=文魚、蘭鋳型=蛋魚)、体色(紅、白、藍、紫、紅白等々)、模様(花、十二紅等々)、頭の形(高頭、獅子頭、虎頭等々)、尾の形(短尾、鳳尾、蝶尾等々)を組み合わせたものです。漢字なのでさほど長くない表記となり大変小気味いい感じがします(例、五花長尾草金魚=シュブンキン、紅白透明鱗獅子頭=桜東錦)そしてこちらもまたグッピーと同じように名前の組み合わせでどんな金魚かが想像できるようになっています。というか、こちらが元祖のような…
ただ日本ではこの金魚の命名法とは異なり、「〜錦」といったような特徴ある品種名が多くつけられるようになりました。グッピーでもあまりに長い名前の品種などには、別の愛称をつけられることもあります。昨今のメダカの改良品種においてもさまざまな特徴ある品種名がつけられていますが、どうもこちらのほうが日本人の好みに合うのでしょう。
ちなみにグッピーのような命名法で飼っている猫を表すと、 「ジャパニーズショートヘアーオレンジマッカレルタビーキャット」・「ジャパニーズショートヘアーソリッドブラックキャット」となるのでしょうか。ご想像のとおり、これはチャトランとジジです。他の品種も考えようとしましたが、ややこしくなりそうですね、猫はやっぱり今のような品種名がいいようです。
そんなわけでグッピーの品種は、様々な遺伝形質の組み合わせから成り立っていることが少し分かっていただけたでしょうか。
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